駄詩 夏の坂道

君がいて
世界が光り輝いていた
君のいない夏は
光もなく
燦々と太陽はそそいでも
私の心は闇
この世界のどこかが壊れて
不調和に回転し
廃墟の中を歩いている気がする
私は闇い森の中を歩いていても
君はまた燦々と光を浴びて生きているのだろうか
それならばいい
私の愛は行き場をなくし
虚しく森をさまよう
森のアサガオは咲きもせず
咲いても虚しくしおれゆく
花ならば
見る人がいてこその花
いや、見るひとがいなくても
せめても心尽くして花咲かん
み山がくれの花
どこか壊れた世界の中で
なんとか倒れかける陽だまりの樹
支えようと心を尽くしてきたが
見る人もなく、支える人もなく
疲れ果て、心も朽ちた
ああ李賀は二十歳にして心朽ちたりと
私は三十五にしてとっくに心朽ち
何を見ても面白くもなく
来ぬ人をまつほの裏の夕凪に焼くや藻塩の身も焦がれつつ
君がいてこそ世界は輝き
君がいてこそ世界は光に満ちていた
はじめに光あれ
いま我は闇に
神はどこに
神は死んだ
ニーチェは死ぬ時は夕映えの如くあれと言った
そうでない死は失敗だと
私がいま死ねば夕映えのようであろうか
いや、まだ夕映えには早く
春ではないが夏の如し
暑くて疲れ果てた夏
なまぬるい風が吹き
冷房もなく
あまりの湿気の中で
頭もまわらず
愚痴を言うのも疲れ果て
乾いた心で
私はひとり坂道を歩く