増支部経典 第四集 六十二 在家の四つの正しい楽しみ

支部経典 第四集 六十二



一、ある時、給孤独長者は世尊の在すところに詣れり、詣り已りて世尊に問訊して一辺に坐せり、一辺に坐せる給孤独長者に世尊は語りたまはく―


二、長者よ、これらの四の楽は欲を受用する在家が時と機会にふれて味わうものなり、何をか四とす。
所有の楽、受用の楽、無債の楽、無罪の楽なり。


三、長者よ、いかなるが所有の楽なるか。
長者よ、世に善男子の如法の財あり、起策し、精励し、汗を流し、腕の力にて集め、徳に由りて得たり、彼は我に如法の財あり、起策精励し、汗を流し、腕の力にて集め、徳に由りて如法に得たり、と思惟して楽を味わい、喜を味わう、長者よ、これを所有の楽と名づく。


四、長者よ、またいかなるが受用の楽なるか。
長者よ、世に善男子あり、起策し、精励し、汗を流し、腕の力にて集め、徳に由りて得たる如法の財を受用し、また財に由りて福を作る、彼は、我は起策し、精励し、汗を流し、腕の力にて集め、徳に由りて得たる如法の財を受用し、また財に由りて福を作る、と思惟して楽を味わい、喜を味わう、長者よ、これを受用の楽と名づく。


五、長者よ、またいかなるが無債の楽なるか。
長者よ、世に善男子あり、何人にも、多くも少なくも、少しも負う所無し、彼は、我は何人にも、多くも少なくも、少しも負う所無し、と思惟して楽を味わい、喜を味わう、長者よ、これを無債の楽と名づく。


六、長者よ、またいかなるが無罪の楽なるか。
長者よ、世に聖弟子あり、無罪の身業を有し、無罪の語業を有し、無罪の意業を有す、彼は、我は無罪の身業を有し、無罪の語業を有し、無罪の意業を有す、と思惟して楽を味わい、喜を味わう、長者よ、これを無罪の楽と名づく。
長者よ、これらの四の楽は欲を受用する在家が時と機会にふれて味わうものなり、と。


七、無債の楽を知りて、また    所有の楽を憶念し
財物楽を味うて          人また慧にて観察す
智者双方を観察し         これ無罪楽に及ばず
十六分の一にもと、と。