現代語私訳 善導大師 「般舟讃」(念仏讃歌)  第十七節

現代語私訳 善導大師 「般舟讃」(念仏讃歌)  第十七節


いばらやとげの草むらや林がこの三界には満ちています、
(浄土への往生を願います)


山や川や大地には、同様に起伏があって、
(はかりしれない喜びよ)


水の中や陸の上、空中に住む生きとし生けるものの性質は、
(浄土への往生を願います)


無明と煩悩ばかりで、誰もが貪りや瞋恚に衝き動かされています、
(はかりしれない喜びよ)


どの瞬間の思いも、異性や財産を貪り求めては苦しみ、
(浄土への往生を願います)


悪業と愛欲と愚かさの縄が人を縛りつけて運んでいます、
(はかりしれない喜びよ)


閻魔大王は使いを送ってきて、地獄に落ちる人を縄で引いて連れ去っていきます、
(浄土への往生を願います)


牛の頭をした地獄の獄卒が嫌がる人を無理やり引っ張っては、また引っ張っていきます、
(はかりしれない喜びよ)


炎が四方に同時に盛んに燃えあがり、
(浄土への往生を願います)


業の風が吹くとそれによって苦しみの中に落ちていきます、
(はかりしれない喜びよ)


炎が最も燃え盛っているのは、地獄の四つの門の外です、
(浄土への往生を願います)


門と門の間には八万四千もの隔たりがあります、
(はかりしれない喜びよ)


一つ一つの隔たりの中に人々が押し寄せ、
(浄土への往生を願います)


地獄の責め道具がガンジス河の砂の数ほどたくさんその中にあります、
(はかりしれない喜びよ)


罪人の身体からは炎や煙が起こり、
(浄土への往生を願います)


刃がついた円月輪や刀剣があちこちから身体に降り注ぎます、
(はかりしれない喜びよ)


すべて地獄の中においては同様にこの苦しみがあります、
(浄土への往生を願います)


いつになったら、どれだけ長い時間が経ったら、休息することができるのでしょうか、
(はかりしれない喜びよ)


念仏三昧の喜びよ、
(浄土への往生を願います)


願わくば、三途の地獄の苦しみを断ち切って、その名すら聞くことがありませんように、
(はかりしれない喜びよ)


七重の鉄の城の中には七重の網があり、
(浄土への往生を願います)


幾重にも重なっている城の中には鉄の樹の林があります、
(はかりしれない喜びよ)


樹の枝々は八万四千もあり、
(浄土への往生を願います)


葉っぱや花や果実は刀剣や刃のついた円月輪のようです、
(はかりしれない喜びよ)


その刃のついた円月輪は上から飛び込んできて下にまで来ます、
(浄土への往生を願います)


頭から切り込んできて足から出ていき、その痛みは耐えることのできないものです、
(はかりしれない喜びよ)


幾重にも重なった門の上には八万の釜があります、
(浄土への往生を願います)


煮えたぎって溶けた銅や鉄が泉のように湧きあがっています、
(はかりしれない喜びよ)


沸騰して波が飛び上がり、八万ヨージャナもの高さにまで撥ね上がり、
(浄土への往生を願います)


その飛沫が門の外の千ヨージャナまでを打ちます、
(はかりしれない喜びよ)


四つの門から四つの道を通って罪人たちが入って来ます、
(浄土への往生を願います)


門を開けると地獄の業火が噴き出て出迎えます、
(はかりしれない喜びよ)


煮えたぎった鉄が炎とともに流れてきて膝までつかります、
(浄土への往生を願います)


その鉄に触れたところは煙と炎が同時に起ります、
(はかりしれない喜びよ)


牛の頭をした獄卒が道の傍らで怒り出せば、
(浄土への往生を願います)


天から雷が落ちたように大地が震動します、
(はかりしれない喜びよ)


罪人がそれを聞いて胸や腹が裂ければ、
(浄土への往生を願います)


鉄虫や鉄鳥が襲ってきて争って食べます、
(はかりしれない喜びよ)


鉄球や刀剣が空中から降ってきて、
(浄土への往生を願います)


煮えたぎって溶けた鉄や銅がその身の上に降り注ぎます、
(はかりしれない喜びよ)


鉄の城は、地獄の門から四万里離れており、
(浄土への往生を願います)


必ずこの道を取って行かされるので避けるところはありません、
(はかりしれない喜びよ)


進む歩みは早く、風が通り過ぎ、矢が射られるようなものです、
(浄土への往生を願います)


短い間に七重の城の門の中に入っていきます、
(はかりしれない喜びよ)


念仏三昧の喜びよ、
(浄土への往生を願います)


専ら念仏して貪りや瞋恚を断ち切るべきです、
(はかりしれない喜びよ)


この七重の鉄の門の中に入ったならば、
(浄土への往生を願います)


いつになったら、どれだけはかりしれない長い時間が経ったら、帰ることができるのでしょうか、
(はかりしれない喜びよ)


罪人たちが入り終ったら門は皆閉じられて、
(浄土への往生を願います)


それぞれの身体でいっぱいですが、お互いに妨げられることはありません、
(はかりしれない喜びよ)


一度そこに伏すことになると、八万劫もの長い時が過ぎていくことになります、
(浄土への往生を願います)


すべては仏法を破壊した罪業の因縁によります、
(はかりしれない喜びよ)


仏法僧の三宝を誹謗し、他の人の善を壊せば、
(浄土への往生を願います)


阿鼻地獄の中に堕ちていきます、
(はかりしれない喜びよ)


笑い戯れながらつくった罪の報いも長い長い時の間に受けることになります、
(浄土への往生を願います)


なぜみ仏の御心を大事にせずに、世俗の人々の心ばかりに目を向けるのでしょうか、
(はかりしれない喜びよ)


気を付けてください、軽々しい心で身体・言葉・心の三業を野放しにしてはなりません、
(浄土への往生を願います)


自業自得の道理は明白です、決してごまかすことはできません、
(はかりしれない喜びよ)


念仏三昧の喜びよ、
(浄土への往生を願います)


業の道のりを横さまに飛び超えて、西方浄土に入りなさい、
(はかりしれない喜びよ)


七重の鉄の城のいくつもの門の外には、
(浄土への往生を願います)


巨大な鉄の蛇が頭を上げて城の上から出てきます、
(はかりしれない喜びよ)


火焔や刀剣や刃のついた円月輪が口から飛び出してきて、
(浄土への往生を願います)


それらがすべて、罪人の上に流れ注がれます、
(はかりしれない喜びよ)


四本の角が生えた鉄の犬が身体中の毛孔から、
(浄土への往生を願います)


煙と炎を吹き出して、罪人の身の上に降らします、
(はかりしれない喜びよ)


羅刹が匕首を心の眼に突き刺してきます、
(はかりしれない喜びよ)


罪人は皆、心眼によって地獄に堕ちたためです、
(はかりしれない喜びよ)


地獄の地上には煮えたぎった鉄による無限の苦しみがあります、
(浄土への往生を願います)


罪人は、倒れ伏したり、逃げ走ったりします、
(はかりしれない喜びよ)


はかりしれない長い長い時間が経った時に、その眼の中に、
(浄土への往生を願います)


城の東の門の外に清らかな林と泉があるのが見えます、
(はかりしれない喜びよ)


罪人はその時、東に向かって走り、
(浄土への往生を願います)


急いで門に辿りつこうとすると、門は閉じられます、
(はかりしれない喜びよ)


そのようなことを繰り返して、四つの門がどれもはるか遠くにある状態が、長い間続きます、
(浄土への往生を願います)


鉄の網が身体に引っ掛かり、まるでいばらの林を行くようです、
(はかりしれない喜びよ)


上からは地獄の鷹が飛んで来て、その罪人の肉を啄ばみます、
(浄土への往生を願います)


地面には銅の犬がいて、争ってやって来てその罪人を食べます、
(はかりしれない喜びよ)


地上にも、空中にも、逃げる場所はありません、
(浄土への往生を願います)


動けばかえって苦しい責め道具が多く降り注いできます、
(はかりしれない喜びよ)