ヘロドトスの歴史の、巻一を読み始めた。
巻一は、二百十五節。
そのうちの、二十二節までをちょっと読んでみたのだけれど、やっぱりとても面白い。
特に、あらためて胸に響いたのは、「序」。
「本書はハリカルナッソス出身のヘロドトスが、人間界の出来事が時の移ろうとともに忘れ去られ、ギリシア人や異邦人の果たした偉大な驚嘆すべき事績の数々―とりわけて両者がいかなる原因から戦いを交えるに至ったかの事情―も、やがて世の人に知られなくなるのを恐れて、自ら研究調査したところを書き述べたものである。」
というのが「序」の全文である。
ここでは、
・時の移ろいとともに忘却が進むことに対する危惧。
・それに対して「記憶」をとどめようとすること。
・特に、偉大な事績を、自民族に限らず、広く人類の偉業として記録しようとすること。
・戦争の原因を探ること。
・それらを自分自身で調べること。
という五つの立場が明らかにされている。
これは、今の現代人にとっても、とても大切な姿勢ではないだろうか。
次に、東西の戦争の原因として、最もはじめの出来事としてヘロドトスがあげているのは、トロイ戦争であることに、読み直してあらためてそうだったのかーっと思った。
ヘロドトスは簡略に触れるのみで、トロイ戦争の詳細にはホメロスのイリアスを読む必要があるのだろうけれど、いわば、ヘロドトスはイリアスの続編の、東西抗争史と言えるのかもしれない。
次の、リュディア王国における、ヘラクレス王家からメルムナス王家に王統が変わるきっかけとなった、カンダウレスとその妻とギュゲスのエピソードはとても面白いが、これについては、他の共読メンバーからまとめていただきたいと思う。
ただ、このエピソードの中に出てくる、古代のことわざらしい、
「己れのもののみを見よ」
ということわざは、このエピソードを離れて見ても、含蓄の深い言葉だなあと思った。
また、二十節から二十二節にかけて、ミレトスの指導者が、リュディアに対して行った情報戦や宣伝戦は、なかなか面白い。
すでにトロイ戦争にもあったけれど、これもまた、相手の裏をかく情報戦の嚆矢ではないかと思った。
ちなみに、イメージを膨らませるために、リュディア王国についての画像が載っているHPをいろいろ検索してみた。
ここには、リュディアの首都・サルディスから出土した品々が少し載っている。
http://www.metmuseum.org/toah/hd/srds/hd_srds.htm
ここには、サルディスの遺跡の写真が多々載っている。
http://www.pbase.com/dosseman/sardis_turkey