現代語私訳 「パリ不戦条約(ケロッグ・ブリアン条約)」

「パリ不戦条約(ケロッグ・ブリアン条約)」は、第一次大戦の悲劇や教訓を踏まえて、1928年に国際紛争の解決の手段としての戦争を放棄した条約として有名である。


最近、第一次大戦についてのBBCの特集を見ていて、そのあまりの悲惨さに胸がつぶれ、ふとこの条約を読み直してみた。


BBC The Great War (一話あたり四回に分けてアップされているのが、七話まで。)
http://www.youtube.com/watch?v=sDHddtnq4mA&feature=player_embedded


一次大戦の切実な反省から生まれたにもかかわらず、その後の第二次大戦に至る道のりを防ぐことができなかったため、この条約は実効性がなかったとよく言われる。
たしかにそうかもしれない。


しかし、条約というのは、人間や各国や関係機関が実現しようと努力し、意志をもってこそ、はじめて実現していくものである。


この「パリ不戦条約」は、期限が書かれていないため、今もこれからも、有効な条約とみなされている。
とすれば、日本は他ならぬ当事者として、遵守すべき条約であろう。


条約そのものはごく短い、そして無味乾燥なものかもしれない。
しかし、その背後に、第一次大戦のはかりしれない悲しみや苦しみや祈りを読み取ることができるか、それが大事なのではないかと思う。


この条約の文章は、以下のサイトで読めるが、なにせ昭和三年調印当時の翻訳の文章なので、古めかしくてとても読みづらい。
http://ja.wikisource.org/wiki/%E6%88%B0%E7%88%AD%E6%8A%9B%E6%A3%84%E3%83%8B%E9%97%9C%E3%82%B9%E3%83%AB%E6%A2%9D%E7%B4%84


というわけで、以下の英語のサイトを見ながら、
http://www.yale.edu/lawweb/avalon/imt/kbpact.htm


自分で訳してみた。
法律的な厳密さはともかく、言わんとするところを自分で味わってみることは大事だと思う。






「パリ不戦条約(ケロッグ・ブリアン条約)」


(調印国の元首の名簿)たちは、


人類の福利を促進する厳粛な義務を深く感じて、


諸国民の間に今存在している平和的で友好的な関係を永続させるために、国家の政策の手段としての戦争を素直に放棄する時代が来たことを納得し信じます。


そして、相互の関係を変える際にはすべて平和的手段にのみよることを求めるべきこと、そして平和的できちんとしたプロセスの結果にのみよるべきことを、確信します。
また、今後、いかなる署名国であっても、国益を増進することを求めて戦争の手段に訴える国は、この条約によって与えられる利益を拒否するものであることを確信します。


これらの例に勇気づけられ、世界のすべての他の国々がこの人間らしい努力に加わることを、そして、この条約が効力を発揮してからはすぐに本条約を遵守することにより、諸国民がこの条約の適用範囲内の利益の恵みを受けて、そのことによって国家の政策の手段としての戦争を共に放棄することによって、この世界の文化と文明を持つ国々が結びつくことに希望を持ちます。



上記のことにより、条約を結ぶことを決意し、その目的のために以下の人々を全権大使として任命します。


(各国全権委員の名簿、日本の全権委員は内田康哉


以上の全権大使たちは、お互いにそのために適切な良い形式において十分な力を持っていることを知らせ合い、以下の条文に同意します。



第一条

締約国は、国際紛争の解決のために戦争に頼ることを非難し、お互いの関係において国家の政策の手段としての戦争を放棄することを、各自の国民の名前において、厳粛に宣言します。



第二条

締約国は、自分たちの間に起こるであろう、あらゆる論争や紛争が、いかなる性質であろうと、またいかなる起源によるものであろうと、平和的な手段以外によっては決してその決着や解決を求めないことに同意します。


第三条

本条約は、各国の憲法における必要条件に従って、前文に署名した締約国によって、批准されます。
そして、これらすべての批准書がワシントンに預けられてからすぐに、お互いに効力を生じます。



(以下、手続き上のことについての文章、略)



1928年8月27日、パリにおいてなされました。



(以下略)