北方謙三 「草莽枯れ行く」

草莽枯れ行く (集英社文庫)

草莽枯れ行く (集英社文庫)

草莽枯れ行く〈上〉

草莽枯れ行く〈上〉


相楽総三が主人公の小説。

もちろん、フィクションだけれど、清水次郎長などの同時代の群像がいろいろ絡んできて、なかなか面白かった。

「死んだ人間に、してやれることはねえ。なんにもねえ。もしなにかやるとしたら、生き残ったもんが、自分のためにやることだ。」

「忘れなきゃいいんだ。相楽総三って男をよ。忘れさえしなけりゃ、墓もいらねえ」

ラストの次郎長のセリフが泣かせる。

途中の、坂本竜馬の、

「草莽は枯れ行く。
そしてまた新しい草莽が芽吹く。
それを繰り返し、無数の草莽が、大地を豊かにしていく。
やがていつか、その大地から大木の芽が出ることもある。
五十年先か、百年先か」

というセリフも、泣かせる。

やっぱり、北方謙三はいい。
男の小説だと思う。