戸部けいこ 「光とともに」 15巻

光とともに… 15―自閉症児を抱えて

光とともに… 15―自閉症児を抱えて


本当に胸打たれる、すばらしい作品だった。

作者の戸部けいこさんが執筆途中でお亡くなりになられたので、『光とともに』はこの15巻が最後の巻となってしまった。

最後の二話分は、構想ノートだけで、絵はまだ完成していない、セリフだけのもの。
でも、ちゃんと、中学生篇がそこで完結していて、一応ちゃんと区切りがついているので、本当に戸部さんにはありがたい気持ちでいっぱいになった。

「(光から教えられたことは)
起こってしまったことは変えられないけれど、
自分と明日は変えられるってこと

自分が変われば
相手も変わるかもしれないってこと

逃げずに何か方法を見つけていこう
そして何か一つでも良いことを見つけて生きてゆくの
どんなちっちゃなことでもかまわない」

というラストのことばは、本当に胸を打たれた。

人生を変える漫画、人生に影響を与える漫画があるとすれば、『光とともに』はその筆頭候補にあげられるべき作品のひとつと思う。

主人公の光のように障害を持つ子どもやその家庭のみでなく、主人公の周辺の子どもたちや登場人物たちの、いろんな現代を生きる人間が抱える生きづらさや問題が描かれていたところも、この作品の深さであり胸を打つところだったと思う。
そして、人のやさしさが描かれていたところも。

個人的には、光の母の幸子のけなげさも胸打たれるけれども、何よりも光の父の雅彦にしばしば胸打たれた。
はじめは冷淡で、幸子の苦悩もちゃんと理解しない、あんまり良くない父親で、一巻の頃はこのまま離婚するのだろうかとすら心配させられたものだが、巻を追うごとに本当に立派な良い夫・良い父親に成長して、特に左遷されていた時の立ち居振る舞いやこの15巻での部下の女の子への態度には、思わずうるっと来た。
私も、雅彦さんのような男になりたいものだと思う。

深見じゅんの『ぽっかぽか』と並んで、この『光とともに』は、家族がいかにあるべきか、人間がいかに生きるべきかについて、また時折、私のバイブルとして読み直したいと思う。

本当に良い作品だった。