藤原正彦 「心に太陽を 唇に歌を」

心に太陽を 唇に歌を

心に太陽を 唇に歌を


藤原正彦さんが自身の小学時代を思い出して綴った子ども向けの本。
戦後の日本の、まだ物質的には貧しかったかもしれないけれど、卑怯を恥とし、やさしさや正義感を大事にしていた、そんな日本人の古き良き精神が伝わってくる、とても良い本だった。

藤原正彦さん自身は、「国家の品格」の著者でもあり、西部邁さんの「発言者」にもよく文章を載せておられたように、どちらかといえば保守派ということになるのかもしれないけれど、日教組の先生に対するこの暖かい気持ちと敬慕の念は本当に胸打たれる。

おそらく、戦後の日本というのは、イデオロギー云々以前に、武士道を重んじる保守派も、日教組のような左派の人も、どちらも卑怯を恥とし、優しさや正義感を持つという点では、通底していたし、通じ合うものがあったのだろう。

短くて、すぐに読める本なので、大人にもぜひ読んで欲しい本と思う。

ドイツの詩人・フライシュレンの詩を山本有三が訳した詩が、この本のタイトルにもなっており、この本を通じて私はこの詩をはじめて知ったのだけれど、とてもいい詩だと思う。
戦後の日本人の精神をよくあらわした詩かもしれないし、そしてこれからの日本人の心を照らす詩だと思う。



「心に太陽を持て」


心に太陽を持て。
あらしが ふこうと、
ふぶきが こようと、
天には黒くも、
地には争いが絶えなかろうと、
いつも、心に太陽を持て。


くちびるに歌を持て、
軽く、ほがらかに。
自分のつとめ、
自分のくらしに、
よしや苦労が絶えなかろうと、
いつも、くちびるに歌を持て。


苦しんでいる人、
なやんでいる人には、
こう、はげましてやろう。
「勇気を失うな。
くちびるに歌を持て。
心に太陽を持て。


(追記)


朝の連ドラ「おひさま」で、主人公の戦死した兄が、この詩を遺言の手紙に書いているシーンがあり、とても胸打たれた。