湯浅誠ほか 「派遣村 何が問われているのか」

派遣村―何が問われているのか

派遣村―何が問われているのか


著者の湯浅さんが言うには、派遣村にやって来ることを余儀なくされた人々に自己責任論を言うよりは、

・中途解約は違法であること
・寮から急に退去させることは借地借家法違反であること

つまり、現行法に反することであり、人災であることをはっきり認識すべきだと指摘する。

今もって、自己責任論や、天災のような仕方のないものであるとの認識、および道徳論の次元で論じられることを考えれば、法律から考えておかしいという指摘は非常に考えさせられる、大事な視点だと思えた。

さらに、ではこの状況の解決のためにどうすればいいかということについて、

・就労支援基金をつくる
・緊急避難所(総合案内所つき)の増設
・住民票があまりにもあらゆる申請のフックになっているので、状況に応じてきちんと対応できるように制度の運用を改善すること
生活保護の「捕捉率」が他の先進国に比べて日本は20%と著しく低いので、生活保護をきちんと受けやすくすること。
・公営低家賃住宅の大量供給

などなどの提言がこの本でなされている。

さらに、日本型福祉社会(社会保険方式+公共事業)からの脱却と、そのための普遍主義にもとづく税方式による社会保障システムの構築と産業構造の転換を主張していることは、とても説得力があり、納得がいった。
北欧が産業構造の転換を促進しながら福祉社会を構築したのに対し、日本がまったくそれができずにいたこと、つまり日本型福祉社会こそが日本のこの二十年の低迷の大きな原因だったことを、今もって理解しない人が多いので、この本を読んでほしい。

さらに、派遣村が男性ばかりで、女性はなかなか可視化されず、その問題や貧困が把握しにくい、女性の貧困問題への取り組みや顕在化はこれからの課題というのは考えさせられた。

「経済の貧困」だけではなく「関係の貧困」への視点や、「もやい直し」ということも考えさせられた。

現代の貧困問題を考える上で、とても示唆することの多い一冊だと思う。