The Tao of Pooh

The Tao of Pooh

The Tao of Pooh


八年ぐらい前、たまたまチャットで話したアメリカ人から勧められて買ったものの、なかなか読み出さずに本棚に置きっぱなしにしていて、やっと昨夜一気に読んで読み終わった。

熊のプーさんが、ピグレットたちと会話しながら、作者の解説の合間合間にかわいい姿を披露してくれている。
そんなこんなで、わかりやすくタオイズム(老荘哲学)のエッセンスが解説されていく。

とてもわかりやすい英語で書かれているので、たぶん誰でもすらっと読めると思う。
しかし、内容はなかなか興味深く、深いメッセージが湛えられているので、とても良い本と思う。

"inner nature"、内なる自然、自分の本性に従って生きることの大切さ、ごちゃごちゃと余計な干渉を自分のinner nature にも他人のそれにもしないこと"Wu Wei"(無為)、などなど、あらためてなるほど〜っと思う。

あと、uncarved blockという意味だというP'uとは「樸」のことだろうか。
シンプルに生きること、そして人にはそれぞれ生かすべきところがあるし、生地をよく生かすことが大事だということを、あらためて教わった。

にしても、私はこの作者が言うほど、タオイズムが本当に素晴らしいものなのか、正直ちょっと疑問がある。
西洋人が東洋のものをとても美しい幻想をこめて受け取った時に生じる誤解が、本来のタオイズムよりすばらしいタオイズムを生み出している気がする。

たとえば、ファーストフードの店では「早く食べろ!急いで!」と客は促されているが、中国の茶館では「あなたは大事な存在です。どうぞゆっくりお過ごしください」と言外に誰にでも語りかけられており、人はそこで自分を取り戻しリラックスすることができる、という記述など、たしかに稀にはそんな茶館や喫茶店が中国や日本にはあるかもしれないが、そんなに多くはないのではないか?!と首をひねる。

また、1930年代に、娘を亡くし、会社は倒産して評判も地に落ちた人が、自殺しようと思って川の岸辺までいったけれど、思いなおして、自殺する覚悟があればいかなるリスクをとることも恐れないでいい、これからは世界が自分に求めることをしよう、と一念発起して立ち直って成功した、というエピソードなど、本当にすばらしい話だけれど、「どこがタオイズムなんだ?」という気がちょっとする・・・。

昭和天皇も、儒教的なバイアスの強い社会において、多忙な生活の中で、道教的なセンスとユーモアに富んだすぐれた人物の事例として挙げられているけれど、昭和天皇はたしかに道教的な気もするが、本当に道教の影響が強かったのかは若干留保が必要で、むしろ神道国学や個人の資質や体験からの達観などが混ざった、なんとも不思議なキャラだったと見るべきで、タオイズムの事例になるのかは若干疑問だ。

とはいえ、そんな感じで、いろんな興味深いエピソードを散りばめた、実際の中国の道教よりもすばらしいアメリカの「タオイズム」を語った本ではないかと思う。

良い一冊だった。