竹中平蔵 「ズバリ!先読み 日本経済 改革停止、日本が危ない!」


なかなか面白かった。

サブプライムローンは商品の問題ではなく、経営の問題である。
格付機関の能力は低いし、腐っている。
ブルドックソースの株に関する外資排除の司法判断は誤りであり、日本の弱点は司法である。
などなど、なかなか刺激的なことが言われていた。

石油価格の上昇には、途上国の需要が増えたことよりも金融要因と供給制限の問題が大きいという話も面白かった。

本書によれば、日本の地盤沈下の原因は、金融の透明化の遅れや規制緩和の遅れ、羽田の国際化の遅れ、英語力の不足などだそうである。
また、ベンチャーに対する優遇税制もまだまだ工夫すべきだし、本当の金融は志の高いストラテジストだという意識改革がまだ十分でないとのことである。

また、「ドル帝国主義」なんていうものは存在せず、アメリカは多様なプレイヤーの集合であり、一枚岩の司令塔があるわけでもなく、陰謀説や擬人化して語るのはおかしいということも言われていた。

竹中さんが言うには、人口減の日本にとって、グローバリゼーションは日本を救う唯一の道だという。
また、グローバリゼーションはチョイスではなくてファクトであるということも述べられていた。
たしかに対応の仕方はいろいろあるかもしれないが、基本的にはそうかもしれないとは思えた。

昨今言われる格差問題についても、べつに小泉改革のせいではなく、正規雇用と非正規雇用の制度的な問題であり、きちんと非正規雇用に対して失業保険や年金を受けられるようにし、同一労働では正社員と同一の賃金が得られるように制度を変えることと、きちんとした貧困対策で対応すべきだということが主張されていた。
全くそのとおりかは別にして、それはそれで傾聴に値する意見だと思えた。

また、2005年以降の日銀の政策の誤りについて指摘してあることも、なるほどと思った。
自民党の失敗は、2007年の参院選の反省の方向を間違えたことにあったという意見も、それはそれで部分的には正しい指摘と思えた。

かつ、これからの日本のための処方箋として、

・competitiveからcopetentへ
・マイニング・ザ・マイナーズ
農地法と農協の改革
・周到な準備を十分をした上での公務員制度改革
・アンビュランス・チェイサーではないきちんとした報道の必要
・英語力の充実
混合診療を認めるようにする医療制度改革
・一人当たりGDPを五年以内に世界で十位以内に戻すことを掲げること

などが述べられており、これらについてはなるほどーっと思った。

さらに、竹中版アジェンダとして、法人税引き下げ・東大民営化・オープンスカイ・英語力充実の四つが特に提起されていた。

法人税引き下げについては、私自身は事業主の社会保障負担の欧米並みの引き上げと連動して行うべきと考えるけれど、このどれも、今後の日本の課題として、検討すべきことと思えた。

今後の日本がどうすべきか、賛否両論いろいろあるとは思うけれど、賛同するにしろ批判するにしろ、いろんな刺激に満ちた本ではあると思う。