五木寛之 「蓮如」

蓮如―聖俗具有の人間像 (岩波新書)

蓮如―聖俗具有の人間像 (岩波新書)


五木さんが言うように、たしかに蓮如は、親鸞の近代性に比べて、とても前近代的な、どこかしらうさんくさい気がするほど、混沌とした人間のように思える。
知性よりも、情や悲の人、だったのだろう。

それにしても、蓮如は五回結婚して、二十数人子どもをもうけているというのはすごいと思った。
四回奥さんに先立たれ、子どもにも何人か先立たれて悲嘆のどん底を経験しているらしいから、はために見えるほどうらやましいものではないのかもしれない。

蓮如が43歳までずっと部屋住みで、43を過ぎてから、はじめて歴史の表舞台に登場し始めたというエピソードも、なんだか聞いて安心させられるものがある。
栴檀は双葉よりかんばし、の逆で、大器晩成の典型だろうか。
43を過ぎてからでも、十分ばりばり後世にのこる仕事ができるとするならば、あんまり焦ってあくせくする必要はないのかもしれない。