映画 「炎の戦線 エルアラメイン」

炎の戦線エル・アラメイン [DVD]

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第二次大戦中、ドイツ・イタリアとイギリスの戦車部隊がエジプトの砂漠で激しく戦った、そんな歴史がこの作品の時代背景。

といっても、華々しい戦争からは程遠く、満足に水や食料や援軍もない状況下で、イタリア軍の前線の兵士が、砂漠の暑さにひたすら苦しみ、よくわけがわからないまま退却して、逃げ惑って苦しむという話。

イタリア軍は、よく話には聞くけれど、そもそも戦車やトラック自体がほとんどなかったみたいで、物量や装備の点で著しくイギリスに劣っていたらしい。

何しに戦場に行って、何のために戦っているのかもわからない。
そんな主人公たちの様子には、見ていて、ため息や嘆きを通り越して、あまりにも馬鹿馬鹿しくやるせない気持ちさえこみあげてくる。

戦争とは、決して輝かしいものでも華々しいものでもなく、みじめで愚かしいことなのだろう。
そのことを、淡々とよく描いた作品だったと思う。

戦争の、そういう側面を描くには、第二次大戦中のドイツや日本はある意味がんばりすぎてそれなりに奮闘して強いだけに、イタリア軍が一番身をもって示していて、うってつけなのかもしれない。

にしても、戦場では、トラックやバイクが一台あるだけで、どれだけ助かるかわからないんだなあと、映画を見ていて思った。
また、水や食料があるということが、そして自由な日常があるということが、平和があるということが、どれだけありがたいことか。

それにしても、映画を見ていて印象深かったのは、同盟国であるはずのドイツ軍が、自分たちだけジープに乗って退却し、載せていってくれと頼む主人公たちに、「このイタリア野郎、くたばれ」と捨て台詞だけのこしていく姿。
まだかろうじて前線が拮抗していた状況でも、ドイツ軍からまわってくる水が、とても飲めたものではない油のような水ばかりだったことが、映画では描かれている。
ドイツからすれば、まったく役に立たず、しかもやがてさっさと降伏してしまうイタリアには、ずいぶん腹が立っていたのかもしれないけれど、いちおう同盟国だったはず。
極限の戦場での同盟国なんて、そんなものなんだろうなあ。
万が一、日本が将来アメリカの片棒を担いで、どこかの戦場に出て行っても、負け戦なら容易にイタリアのような目に遭いそうだと思った。