辻潤 「絶望の書 ですぺら」

絶望の書・ですペら (講談社文芸文庫)

絶望の書・ですペら (講談社文芸文庫)

単純に面白かった。

もっとくだらない、ぐだぐだした、どうしようもないものを想像していたのだけれど、読み始めたら意外や意外。

たしかに、どうしようもないと言えばどうしようもないが、その語り口はとても面白く、活発発地といえばいいのだろうか、とても面白かった。

辻潤は、名前だけは大杉栄や伊藤野江の関連で昔から聞くけれど、その書いた文章はいまいちちゃんと読んだことがなかった。

もっと早くに読めばよかったと思った。

とてつもなく、率直に、正直に、飾らずに、書いてある文章だと思う。
こんな風に率直に自分を吐露できたら、いいのかもしれない。

酔生夢死になりたいが、なかなか何事にも酔えぬ、という一文があって、とても共感した。
今まで、酔生夢死であってはならないと思って私は生きてきたけれど、本当は辻潤が言うような気持ちで生きてきたような気もする。

また、人生における享楽の意義を辻潤が述べていて、享楽するためにも、自分が何を欲しているのかきちんと意識し、そのための訓練や準備が必要だと述べているのも、なるほどと思った。

一度読んでみたらいいかもしれないし、一度読んだたら、だいぶ経ってしばらくしてから読んでみるといい本なのかもしれない。
ダダイズムというのはこれを読んだあともいまいちよくわからないが、率直に自己を語るための何かであるのかもしれないとは思った。