「きけわだつみのこえ」

あのような時代にあっても、

時代や社会に対する批判的な知性を多くの若者が持ちえていたこと。

豊かな感性や繊細な心をほとんどの若者が具えていたこと。

そして、そういうすぐれた人材が、無謀な戦争であたら貴重な命を捨てなければならなかったこと。

おそらく、心ある人ならば、誰が読んでも、それらのことに胸を打たれ泣けてくると思います。

ただ、大事な事は、感傷にひたることではなくて、こうした戦没学生たちが、ぎりぎりまで見つめた、あの戦争の愚かしさや無謀さを、
忘れることなく、二度と繰り返さないような知性と批判精神をくりかえし自分のものとしていくことかもしれません。

そして、そうしたいろんな不条理にもかかわらず、限りなく彼等が愛した家族や郷土や日本の尊さを、しっかり引き継いで、責任を持って愛していくことなのかもしれません。

左翼とか右翼とか、そんなものは関係なく、人間として、ときどきは、この本の声に耳をかたむけて、今の自分の生き方やあり方、今の日本の現状やあり方について、思いをめぐらしてみることも、とても大事なこと、忘れてはならないことなのではないかと思います。