菅総理朝鮮学校無償化の審査再開へ 朝鮮学校への就学支援金適用の場合のコスト計算

菅首相朝鮮学校無償化の審査再開を指示
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110829-OYT1T00610.htm



このニュースについてのブログの一覧をざっと見たら、ほとんどが批判や罵倒の内容のようである。
多くのブログがこのニュースについて書かれているのを見ると、かなり関心が高いのだろう。


ただ、若干疑問なのは、あまりコスト面からの議論を誰もしていないことである。


これは、以前試算してみたことだが、


私学と同じく一か月あたり11万8千円分を就学支援金として支給するとした場合(所得の低い世帯においては(年収入250万円以下)、就学支援金が23万7600円出る場合もある)、


朝鮮学校の高校段階の生徒数は、およそ1900人だそうなので、大雑把に12万〜24万として計算すれば、 朝鮮学校の無償化(就学支援金適用)にかかる費用は年に2億2800万〜4億5600万となる。


年間2億〜4億の金額を国家にとって高い数字とみなすかそうでないかは、個々人の判断によることだろうけれど、子育て手当や思いやり予算などに比べたら、本当に微々たる金額だ。
天下り官僚の退職金や報酬のほんの二、三人分(ひどい場合は一人分)で軽く捻出できる金額である。


朝鮮学校への就学支援金適用に反対する人は、反日教育ということが理由なのかもしれない。
なので、金額の多寡は問題ないと考えるのかもしれない。
それはたしかに、感情の問題としてはそのとおりだろう。
今回の菅総理の指示も、あくまで審査ということなので、教育内容について精査したり朝鮮学校ときちんと交渉して、もし就学支援金の適用を受けるのであれば度の過ぎた反日教育がある場合はやめるべきだろう。


他に考えられる理由としては、北朝鮮とは国交がないという理由もしばしばあげられるが、現在、北朝鮮と同じく国交のない台湾の中華学校は、無償化の対象になっているそうである。
そうだとすれば、法の下の平等の観点から朝鮮学校を無償化の対象にしないことは筋道がよくわからない。
国交や法的条件をもって朝鮮学校を就学支援金の対象外とするならば、台湾も対象外とすべきだし、台湾の中華学校を対象とするならば、朝鮮学校も対象にすべきと言えると思う。


そもそも、朝鮮学校を適用除外とする措置は、北朝鮮の韓国への砲撃事件が理由だったが、子どもにはあまり関係ないことのようにも思う。
その本国の行動を理由としていかなる措置も可能というのであれば、戦時中におけるアメリカの日系人強制収容や、南米などでの日系人の土地の強制没収も正当化されることになるのではないか。


要は、政治的理由によってマイノリティを制度的に疎外する国家社会でOKと思うか、長期的に見た場合はマイノリティを包摂した国家社会の安定の方が望ましいと思うかの選択の問題だと思う。


もちろん、選択は個々人がよく考えてすべきことと思うが、まずはどれぐらい金額がかかるのか、その理由は何なのかを、各自冷静に検討してもいいのではなかろうか。


2〜4億の金額を出し渋って、マイノリティに深刻な亀裂や疎外感を抱かせることは、私は長期的に見た場合、あんまりコストとして妥当な計算とは思えない。
他に金額を出し渋るべき事柄は、もっと巨額のことで山ほどあるように思えるが、それらのことにはしばしば多くの人は無関心のようである。


ナショナリズムに関連する事柄は、しばしば多くの人の関心を引き、センセーショナルな話題になる。
一概にそれを悪いとは言わないが、ウォーム・ハートとクール・ヘッド、熱い心と冷静な頭脳は常にワンセットであるべきで、コスト計算をきちんとしないで感情だけ盛り上がるとしたら、疑問な気がする。