メルトダウンの情報は後出しだったのか?

ネット上である人とやりとりをしていたら、「政府はメルトダウンについての情報が後出しだった」と述べていた。


それで、ネットでも検索してみたら、ずいぶんそんな情報が乱れ飛んでいるようである。
二カ月間もメルトダウンの情報を伏せて、情報を隠蔽していたと憤慨している人々もいるようだ。


はたしてそうなのだろうか?


実は、3月14日には、枝野官房長官も、東電の武藤栄副社長も、炉心融解メルトダウン)の可能性について言及している。


3月14日付 朝日新聞
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201103140437.html


後出しって、具体的にどういうことなのだろう。


さっぱりわからない。


5月20日参院予算委員会での質疑応答も、ずいぶん歪められた形で菅総理の発言を伝えているブログがネット上にはあるようだが、正確には以下のようなものだ。


(5月20日参議院予算委員会


○魚住裕一郎君 総理、まだ十一万人の避難生活者がいるんですよ、これは。あるいは、原発で避難されている方が、牛も殺されて、高齢者を抱えて、子供を抱えながら次へと次へと避難しなきゃいけないという状況で、何が青写真ですか。総理の決断としてこうやりましょうと、そこで会期足りないから延長しましょうと、こういう話になってくるんじゃないですか、普通は。私は、そこのところを、本当にちょっと逆さまになっているなということを言わざるを得ないところでございます。
 次に、先般、東京電力福島第一発電所メルトダウンというのがありました、また炉心溶融ですか。我々の感覚だとちょっと違ったなと、今までの政府が説明してきたことと。ええっ、人によってはやっぱりなと思うかもしれない。要するに、もう発災直後から溶融が始まっていたんじゃありませんか。何か、本当は知っていたんじゃないですか。それを隠して、小出しにして、あの汚染水も海に放出したときに事後報告だったということで各国から非難を受けましたけれども、情報をきちっと海外やあるいは国民に伝えるという意味では、何か我々国民は本当に知らされていないなということを感じるんですよ。そういう政府を信じろと言うんですか。
 これについて答弁いただきたいと思います、総理。


内閣総理大臣菅直人君) 今、メルトダウンということについてでありますけれども、私も、三月十一日の発災以来、いろいろな意見を内外から、内外というのは政府内あるいは外からもお聞きをいたしております。そういう中において、たしか五月の十五日の東電の発表までは、第一号機において燃料棒の三分の二程度が水に浸っている状態にあると思われると、そういうことが東電から言われておりまして、それを前提として物事を考え、対策が練られてきたわけであります。しかし、それが、電源回復後、中に作業員が入って水位を改めてきちんと測れるようにしたところ、そういう想定が根本から崩れて、早い段階で燃料棒が溶融して下の方にたまった状態になっていたということに想定そのものがといいましょうか、大きく変えられたわけであります。
 ただ、これは、幸いにしてという言葉は気を付けなければいけませんけれども、いずれの場合も注水によって温度を下げておくと、たとえ燃料棒が多少水につかっていようとも、あるいはメルトダウンの状況にあろうとも、とにかく水を注入して温度を下げておくという作業が必須だということにおいては変わっていなかったことで、それを今日まで続けてきたところであります。
 そういった意味で、私も、国民の皆様に従来こうであろうと言ったことについて根本的に違っていたことについては、政府そのものが隠したということでは決してありませんけれども、少なくとも東電等を含めた見通し、推測が大きく違っていたことがきちっと政府においても対応できなかったという意味では大変申し訳ないと、こう思っております。


http://kokkai.ndl.go.jp/cgi-bin/KENSAKU/swk_dispdoc.cgi?SESSION=19219&SAVED_RID=1&PAGE=0&POS=0&TOTAL=0&SRV_ID=9&DOC_ID=8262&DPAGE=1&DTOTAL=1&DPOS=1&SORT_DIR=1&SORT_TYPE=0&MODE=1&DMY=19328



要するに、5月15日の東電の発表(メルトダウンが震災後16時間で発生)ということはよくわかっていなかったが、海水注入による冷却作業はずっと続けていた、ということだ。


メルトダウンが確実に発生したという情報はたしかに遅れたかもしれないが、それは情報の確認がなかなかできなかったということではないか。
あるいは、東電による解析や報告が遅れたということではないか。
政府が隠蔽したというのであれば、その証拠を示すべきである。


だいたい、メルトダウンの可能性は上記のように3月14日にすでに枝野官房長官が述べている。
また、放射性物質の拡散の可能性も、3月12日にすでに言われている。
3月11日の夜には、福島第一原発の周辺地域に住む住民の避難を進めている。
しかも、メルトダウンだった場合に必要だった措置である海水の注入による冷却作業はずっと行っていたのである。


何が問題だったのだろうか?
何を隠蔽していたというのだろうか?
では、どうすればよかったというのだろうか?