与謝野さんの入閣について、ネットで見ていると、まぁなんというか、ひどい悪口雑言ばかりで、甚だ辟易する。
私は消費税増税には反対だし、安易な重税国家化はなんとしても避けるべきだと思うので、与謝野さんの政策には必ずしも賛同するものではないし、今回の与謝野さんの入閣が重税国家路線への第一段階だとしたら困ったものだとは思う。
しかしながら、この時期に、たちあがれ日本から離脱し、単身民主党の内閣へ飛び込むというのは、あらゆる批判を覚悟しての捨て身の行動であり、私心や保身からは到底できない行動だと思う。
その目ざすところの是非は別にして、その政治家としての出処進退は、昨今の世論に阿りポピュリズムしか頭にない多くの政治家や、多くの無責任なマスコミと大衆世論に比べれば、はるかに骨のあるものではないかと思う。
だいたい、与謝野さんを変節だとか、民主党をけしからんと言っている人々が、同じ口で自民党政治や麻生政権をなつかしみ賛美しているのを見ると、頭がどうなっているのかと疑問でならない。
あるいは、今の菅政権や与謝野さんが新自由主義だなどと言っている人々の意見も全くもって事実に反したもので、理解に苦しむものである。
そもそも、これを読んでみたらどうだろう。
安心社会実現会議の会議報告「安心と活力の日本へ」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ansin_jitugen/kaisai/dai05/05siryou1-1.pdf
安心社会と共生貢献、モラルある自由市場経済、雇用や子育ての重視を掲げたものだが、菅政権の現在の施政方針もだいたいこの路線に沿ったものだろう。
これは、麻生政権の時代に、与謝野さんらがまとめたものである。
自民党も、かつてこのような政治構想を打ち出していたのであれば、党利党略ばかりに走ったり大衆世論を煽るデマゴーグに走るのではなく、おおまかな方針で民主党と内政面で一致するのであれば、是々非々で個別具体的に政策論で正々堂々と勝負すべきであろう。
マスコミも、なんでも批判と否定の種にしかしないのを正直苦々しく思う。
もうちょっと長いスパンで見て、どのような流れにあるのかを長い射程のもとに解説することをしないで、単に表層の情報だけを垂れ流して、しかもそれをネガティブな色彩でばかり報道して愚民を煽るのは正直どうかと思う。
民主党の現在の政治にも問題は確かに多いが、一方で一括交付金の制度を進めて地方の自主裁量の要素を増やしていることは、地方分権や地域自治を支持する立場の人であれば当然支持すべきことである。
診療報酬の改定率引き上げはこの十年間で民主党政権になってからやっと実現したことである。
さらに言えば、文教費の方が公共事業費よりも上回る予算配分など、かつての自民党時代の土建国家全盛の頃からは考えられないことであり、「コンクリートから人へ」を困難な状況の中できちんと実施しようしているものだと評価できよう。
菅さんが最近行った諫早開門の決断や硫黄島の遺骨収集も立派なことだったと思う。
さらに菅政権が現在掲げている三つの方針、つまり「平成の開国」(自由貿易推進)・「最少不幸社会」(貧困や失業問題への取り組み)・「不条理を正す政治」(特命チームによる個別具体的な問題への迅速な取り組み)の三つは、どれも今の日本にとって最も必要な課題でありビジョンだと思う。
私は前回の参院選では民主党には投票していないし、さほど菅さんや与謝野さんを擁護する義理はないが、こうもバランスを欠いた大衆世論を見ていると、正直疑問に思えてならない。
命をかけて私心を捨てて行動している政治家たちには、その政策の是非は別にして、正当なリスペクトと礼節を、マスコミも大衆世論も払うべきではないか。
異論があるというのであれば、政策について、正々堂々と根拠を示しながら批判し議論すれば良いことだと思う。
ろくに政策についての議論も知識もなく、その政治家がなぜこれほどの捨身の行動をとるのかへの考察やその背景への理解もなく、なんでもデマゴーグよろしく批判と嘲笑の種にするような社会であれば、ろくな民主政治は育たず、そこに残るのは責任感やモラルある人々の政治からの退場と無責任なデマゴーグばかりの跋扈ではなかろうか。