Nスペ 「パレスチナ 響きあう声 〜E.W.サイードの「提言」から〜」

昨日、年末に再放送であっていたNスペ「パレスチナ 響きあう声」という番組をビデオで見た。
パレスチナの知識人であるサイードとラジ・スラーニが出てきて、とても深い話をしていた。
2003年9月、イラク戦争のあった年に放映された番組だそうである。

イードが、「アイデンティティとは自ら選びとるものだ」と話していたのが印象深かった。

アイデンティティとは、生まれた場所や民族で自動的に決まるものではなく、自らが選択や信念や生き方を通して選び取るものであり、複数持つこともでき、広げることもできる。
自分にとっては、第三世界の解放のために闘う人々の一員としてのアイデンティティをある時期に選び取ったし、パレスチナ人であると同時にカイロで生まれ育ったり、言語を通して英語やフランス語圏とも結びついているし、米国籍も持っている。
人は、自分の故郷を持つのと同時に、他の故郷を持つために自分を広げていくこともできる。

アイデンティティとは、自分の生き方の問題として選び取っていくこと。

イードは、上記のようなことを話していて、とても印象深かった。

また、サイードもスラーニも、今の時代にはアメリカやイスラエルが新しい衣装の帝国主義を振るっており、イラク戦争もその中で起こったことで、帝国主義は決して過去のものではなく、新しい形で現在も存在している問題だと指摘していた。

パレスチナの置かれている無権利状態やひどい状況、それらがイラク戦争後のロードマップでも少しも取り上げられていないことなどもサイードやスラーニが指摘していて、あらためて胸が痛んだ。

イードとスラーニが、アメリカが広めるようなグローバリズムとは違った、世界中の一般市民がパレスチナに関心を寄せ手をさしのべてくれるような、草の根グローバリズムというものがあり、そのグローバリズムは非常に重要でパレスチナが生きていくためにもとても意味のあることだと話しているのも印象深かった。
草の根グローバリズム。草莽グローバリズム
たしかに、そんなものが、今はまだ微弱かもしれないけれど、全く存在しないわけではないだろうし、確かにとても大事な事なのかもしれない。

イードはちょうどこの番組の本放送があったころ、2003年に亡くなっているけれど、そのメッセージ、もっといろんな本を読んで、きちんと受けとめたいと改めて思った。