三十二人相の背後にある働き・功徳
「偉大な人の三十二の特徴」(三十二相経、優婆夷浄行法門経)の抜粋
(「原始仏典」(春秋社)第三巻より)
・ さまざまな善き教えをしっかり受持し、動揺しない。
身体・ことば・心の善き行い、施しをすること、戒めを守ること、ウポーサタを行うこと、母・父への孝行、修行者・バラモンへの恭敬、一族の長老への敬意、非暴力などさまざまなすぐれた行為を確固として遂行する。
この行為を行い、集め、蓄積し、増大する。
⇒足安立相
・ 多くの人々の幸福ための尽くし、苦痛や恐怖を除去し、理にかなった保護と防御を整え、行き届いた施しを行い、精励する。この行為を行い、集め、蓄積し、増大する。
⇒足下二輪相
・ 生き物を殺さず、生き物を殺すことを嫌悪し、刑罰と武器を廃し、恥を知り、憐れみの心をもち、あらゆる生き物に利益と慈悲をもたらす。この行為を行い、集め、蓄積し、増大する。
⇒足跟広平相、長指相、直身相
・ 極上のおいしい食物、すなわち噛む食物、柔らかい食物、味わう食物、舐める食物、飲物を与える。この行為を行い、集め、蓄積し、増大する。
⇒七処隆満相
・ 気前のよさ、やさしいことば、奉仕、協力の、四つの把握法によって人々を導く。この行為を行い、集め、蓄積し、増大する。
⇒手足柔軟相、手足網縵相
・ 多数の人々のために利益をもたらし、真理をもたらすことばを語る。多数の人々のために説明し、生けるものに利益と幸福を運び、もの惜しみせず、真理の供養者である。この行為を行い、集め、蓄積し、増大する。
⇒足趺高相、毛上向相
・ 注意深く技芸、学術、行動、仕事を人々に教える。
「どうすれば私は速やかに学ばせ、速やかに理解させ、速やかに納得させて、長く苦労させないようにできるだろうか」と考えながら。
この行為を行い、集め、蓄積し、増大する。
⇒鹿踹相
・ 「善とは何か?悪とは何か?
過失とは何か?無過失とは何か?
すべきこととは何か?すべきでないこととは何か?
長い間行ってためになり、安楽になるのは何か?長い間行ってためにならず、苦しみとなるのは何か?」
と修行者やバラモンに近づいて質問する。
この行為を行い、集め、蓄積し、増大する。
⇒細薄皮相
・ 怒らず、晴朗な気持ちに満ちている。あれこれいわれても不機嫌とならず、立腹せず、敵意を持たず、かたくなにならず、怒りも憎しみも不満も表しない。柔らかい敷物・着物・毛布を施す。この行為を行い、集め、蓄積し、増大する。
⇒金色相
・ 長い間行方不明になっており、不在である親族・友人・知己・同輩を再会させる。ひとつにまとめる。この行為を行い、集め、蓄積し、増大する。
⇒陰蔵相
・ 人々の集団を観察して正しく知悉する。自分を知り、人を知り、人の長所を知って、「この人はこれに適している、この人はこれにふさわしい」というようにして人々の特質を見通す。この行為を行い、蓄積し、増大する。
⇒身広長等相、正立手摩膝相
・ 多くの人々のためになることを願う。
人々の利益・安楽・平安を願って、
「どうすれば私は彼らの信心を増やすことができようか。戒めを、教育を、施しを、理法を、智慧を増やすことができようか。財穀を、田地を増やすことができようか。家族・親族・友人・縁者を増やすことができようか」と考え、また健康・容色・安楽を増やすことを考え、どうすれば他人を損なわないかと願い、その繁栄を熱望する。
この行為を行い、集め、蓄積し、増大する。
⇒師子上身相、両腋下隆満相、肩円好相
・ 手によっても、石によっても、棒によっても、剣によっても、生けるものたちを決して傷つけない。
この行為を行い、集め、蓄積し、増大する。
⇒得上味相
・ 横目を使わず、目の端で見ず、差別的に見ることなく、真っ直ぐに、正直に見て、愛情深いまなざしで多くの人々を眺める。この行為を行い、集め、蓄積し、増大する。
⇒紺青眼相、牛目睫相
・ 多くの人々の先導者となる。さまざまな善いこと、身体・ことば・心の善行、施しを行うこと、戒めを守ること、ウポーサタを行うこと、母・父への孝行、道の人・バラモンへの尊敬、一族の長老への敬意など種々さまざまな優れた徳を、多数の人々の先頭に立って行う。この行為を行い、集め、蓄積し、増大する。
⇒肉髻相
・ 嘘をつかず、嘘を嫌悪し、真実を語り、真実を離れず信用が置け、信頼でき、言行一致の人である。ありのままの事実、真実に満足する。この行為を行い、集め、蓄積し、増大する。
⇒一孔一毛相、白毫相
・ 悪口を言わず、悪口を嫌悪する。こちらで聞いたことで不和をもたらすことを向こうに言わず、向こうで聞いたことで不破をもたらすことをこちらに語らず、こうして仲違いしているものたちを結びつけ、一緒にいるものたちをさらに助け、和合を楽しみ、和合に満足し、和合を喜び、和合をもたらすことばを語る。争いをなくし、断絶した間柄を結びつけるようなことばを語る。人々の争いを除き、たがいに仲良くするのを喜び、楽しむ。この行為を行い、集め、蓄積し、増大する。
⇒四十歯相、具足歯相
・ 粗暴なことばを使わず、きつい粗暴なことばを避ける。欠点がなく、愛情にあふれ、心にしみ入り、上品で、多くの人に愛され、多くの人の気に入ることばを語る。この行為を行い、集め、蓄積し、増大する。
⇒長舌相、梵音相
・ 無意味なおしゃべりをせず、無意味なおしゃべりを避ける。適時に語り、事実を語り、有意義なことを語り、理法を語り、戒律を語り、含蓄のあることばを語る。正しい時に、合理的で節度あり、意味のあることを語る。よく配慮の行き届いたことばを語る。無益なことをいわず、有益で、多くの人々の幸福になることを語る。この行為を行い、集め、蓄積し、増大する。
⇒師子頬相
・ 悪い生活方法を捨て、正しい生活方法によって生活する。偽りの天秤・貨幣・物差の使用、賄賂・いかさま・詐欺などの不正行為、手足の切断・殺害・拘束・待ち伏せ・略奪などの暴力行為をしない。平静に、心清く、正義をもって生計をたてる。無益なことを捨てて、有益で、多くの人に幸せになることを語り行う。この行為を行い、集め、蓄積し、増大する。
⇒歯斉相、白歯牙相