雲井龍雄 「秋暁」

「秋暁」

夢魂乍被雁声驚  夢魂 乍(たちま)ち 雁声に驚かさる
起渉前園洗宿酲  起つて 前園を渉り 宿酲(しゅくてい)を洗ふ
時有秋蛩跳入草  時に 秋蛩(しゅうきょう)有り 跳んで草に入り
牽牛花動露晶々  牽牛花は動き 露 晶々


(大意)

(昨日は深酒をしてすっかり眠り込んだが)、
雁の鳴く声に、夢から覚まされた。

起きて、二日酔いをさますために、庭を散歩した。

そうしたら、その時、コオロギが飛び跳ねて、草むらに入っていった。

朝顔の花が動いて、きらきらとした露がこぼれ落ちた。

(私は二日酔いでぼーっとした頭だったというのに、コオロギは活発発地に、朝顔はこんなにも美しく、世界はきらきらとしていた。)