雲井龍雄 「長州邸に、毛利・林二公と会す、酔中筆を走らす」

「長州邸に、毛利・林二公と会す、酔中筆を走らす」


忍死多年膽幾嘗  死を忍びて 多年 膽(たん) 幾たびか嘗(な)む
義旗果自会稽揚  義旗 果たして 会稽より揚がる
不疑覇業往将就  疑はず 覇業 往々(ゆくゆく)将に就(な)らんとす
臣若范蠡君越王  臣 范蠡の若(ごと)く 君は越王

(大意)

長州は、幕末動乱の中で、いくたびも肝を舐めるようなつらい苦い思いをかみしめ、数多の死をかいくぐり、忍んできた。

維新回天のための大義の旗は、蛤御門や第一次長州征伐での敗戦の屈辱の中からこそ、まさに立ち上がってきたものである。

私は、長州がやがて幕府を倒し、近い将来に天下に覇を唱えることに何の疑いもない。

長州の藩士たちは、皆、古代中国で呉に滅ぼされながら再び越を復興した名臣・范蠡のような智謀と志の持ち主たちであり、長州公はさながら越を多年の辛苦によって復興した越王句践のような名君だ。