雲井龍雄「失題」
遺臭流芳任我意 遺臭流芳 我が意に任す
拙誠巧作有天知 拙誠巧作 天の知るあり
淋漓灑盡満腔血 淋漓 灑(そそ)ぎ尽くす 満腔の血
字々全含憤輿悲 字々全て含む 憤と悲と
(意訳)
「自分の心のままに、後世に自分が生きた軌跡の香りをのこしていこう。
つたなくとも真心で生きた人生だったか、
巧みな偽りを並べたてた人生だったかは、
それぞれの人の人生の善し悪しの香りについては、天がすべてお見通しで知っておられる。
この身体に満ちる血が、ほとばしり、あふれしたたって、
私の残す漢詩となり、その言葉の一句一字となっている。
その一句一字すべてに、私のこの時代と社会に対する憤慨と悲しみもすべてこもっている。
思いのままに述べてきた、それらの言葉の数々が、後世にきっと残って、残り香となる。 」