雲井龍雄

雲井龍雄 「肥後邸に、岡松・藤本・田尻諸翁と会し、酒間、筆を走らす」

「肥後邸に、岡松・藤本・田尻諸翁と会し、酒間、筆を走らす」 大木縦将倒 大木 縦(たと)へ将に倒れんとするも 一縄猶可支 一縄 猶(なほ) 支ふ可(べ)し 包胥酬楚日 包胥 楚に酬ゆるの日 子貢使斉時 子貢 斉に使ひするの時 天地如無愧 天地 如(も)し …

雲井龍雄 「羽倉鋼三郎に示す」

「羽倉鋼三郎に示す」 粗豪自許国干城 粗豪 自ら許す 国の干城 胸裏常儲百萬兵 胸裏 常に儲(たくは)ふ 百萬の兵 斉趙渝盟秦業立 斉趙 盟を渝(か)へて 秦業立ち 蜀呉構難魏謀成 蜀呉 難を構へて 魏謀成る 輸誠或不回天意 誠を輸(いた)すも 或は天意を回…

雲井龍雄 「白梅篇」

「白梅篇」 少小読破万巻書 少小 読み破る 万巻の書 欲討聖源溯泗洙 聖源を討(たづ)ねて 泗洙に溯(さかのぼ)らんと欲す 道與世背無所用 道 世と背いて 用ふる所なし 豪宕卻是一侠徒 豪宕(ごうとう) 卻(かへ)つて是れ 一侠徒 破産傾身多結客 産を破り…

雲井龍雄 「偶作十首 其の五」

「偶作十首 其の五」 欲取丹心貫始終 丹心を取って 始終を貫かんと欲す 多言招罪也葵衷 多言 罪を招くも 也(また) 葵衷(きちゅう) 前途料得夷耶険 前途 料得すれば 夷か険か 月有浮雲花有風 月に 浮雲有り 花に風有り (大意) 国を思う真心を大事にして…

雲井龍雄 「偶作十首 其の四」

「偶作十首 其の四」 古人名節貴成仁 古人の名節 仁を成すを貴ぶ 勿問小疵與大醇 問ふ勿(なか)れ 小疵と大醇とを 二十五年何所学 二十五年 何の学ぶ所ぞ 唯憂社稷不憂身 唯(ただ) 社稷を憂へて 身を憂へず (大意) 古えの人々の名誉と節操は、ただ本当…

雲井龍雄 「述懐」

「述懐」 生不聊生死不死 生きては 生を聊(やす)んぜず 死して死せず 呻吟聲裡仆又起 呻吟 聲裡 仆(たお)れて又起(た)つ 立馬湖山彼一時 馬を湖山に立つる 彼も一時 雄飛壮図長已矣 雄飛 壮図 長(とこしな)えに已(や)む 我生有涯愁無涯 我が生 涯…

雲井龍雄 「有感」

「有感」 欲求死所向何処 死所を求めて 何処(いずこ)にか向かわんと欲す 深愧志乖身尚全 深く愧ず 志乖(そむ)き 身なお全(まった)きを 熱血嘔来丹若渥 熱血 嘔(は)き来(きた)り 丹若 渥(うるお)ひ 回天事業有空拳 回天の事業 空拳にあり (意訳…

雲井龍雄 「讒せられて感あり」(被讒有感)

「讒せられて感あり」(被讒有感) 孰是為奸孰是賢 孰(いず)れか是(こ)れ奸となり 孰れかこれ賢 素因同異有憎憐 素(も)と 同異に因(よ)って 憎憐あり 唯須留得生前業 唯(ただ) すべからく 生前の業を留め得て 付与千年知己伝 千年の知己に 付与し…

雲井龍雄 「失題」

雲井龍雄「失題」 遺臭流芳任我意 遺臭流芳 我が意に任す 拙誠巧作有天知 拙誠巧作 天の知るあり 淋漓灑盡満腔血 淋漓 灑(そそ)ぎ尽くす 満腔の血 字々全含憤輿悲 字々全て含む 憤と悲と (意訳) 「自分の心のままに、後世に自分が生きた軌跡の香りをのこ…

雲井龍雄 「集議院の障壁に題す」

雲井龍雄 「集議院の障壁に題す」 天門之窄窄於甕 天門の窄(せま)きは甕よりも窄し 不容射鈎一管仲 容れず 射鈎の一管仲 蹭蹬無恙旧麟騏 蹭蹬 恙(つつが)なく 旧麟騏 生還江湖真一夢 生きて 江湖に還る まことに一夢 自笑豪気猶未摧 自笑 豪気 なおいま…

雲井龍雄 「辞世」

雲井龍雄 「辞世」 死不畏死 死して死を畏(おそ)れず 生不偸生 生きて生を偸(ぬす)まず 男兒大節 男児の大節は 光與日爭 光(かがやき)日と爭(あらそ)う 道之苟直 道 之(これ)苟(いやし)くも直(なお)くんば 不憚鼎烹 鼎烹(ていほう)を憚(は…