北朝鮮が水爆を開発した以上、戦争は無理で、少なくとも当面は共存を図るしかないのではないか。
だというのに、韓国の文政権以外、あまり緊張緩和に努めている様子が各国に、特に日本の政府に見えないのは、どうしたことかと首をかしげる。
北朝鮮としては、リビアのカダフィ政権が核開発を放棄した後に滅びて以来、核開発以外に自分たちが生き残る道はないと思い詰めているのだろう。
将来的に、朝鮮半島を連邦制にして非核化する長期的ビジョンを出して、当面は北朝鮮に核開発をやめる代わりに巨額の経済援助を行っていくことで、共存を図り緊張緩和を目指すような方針を、日本と韓国が連携して示していけば、だいぶ事態は改善するのではないか。
しかし、日本の現政権にはそうした姿勢や意志は全くないようである。
言うまでもないことだが、水爆が落ちたら終わりである。
Jアラートの警報がなってから机の下や茂みに隠れても何にもならない。
9条改正をしても通常兵器をどれだけ強化しても、水爆が落ちたら終わりである。
そして、ミサイルを連発されれば、イージス艦やPAC3が確実に迎撃できる可能性は低くなる。
仮に迎撃に成功しても、おびただしい核物質が飛散するリスクは免れない。
いずれにしろ、絶対に戦争などできなくなった。
非難決議や経済制裁はもちろんあってしかるべきかもしれないが、かといって石油の全面禁輸などしたら、かつての日本がABCD包囲網に逆切れして暴発した歴史の悲劇を繰り返しかねない。
そのことをよく歴史の事例を引いて避けるように助言できるのは日本なのではないか。
豊田穣 「名将宮崎繁三郎―不敗、最前線指揮官の生涯」
名将宮崎繁三郎―不敗、最前線指揮官の生涯 (光人社NF文庫)
- 作者: 豊田穣
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だいぶ昔から本棚に置いてあったのだけれど、なかなか読めずにいた。
今年の夏、やっと読み終えることができた。
宮崎繁三郎は、ノモンハン、インパール、ビルマ戦などで、見事な指揮で多くの戦果を挙げた名将だが、この本ではその人間性をよく描いてあり興味深かった。
特に胸を打つエピソードは、宮崎繁三郎の部隊はインパール戦で一番困難な最前線で戦い、作戦中止のあとは最後尾を引き受けたのだけれど、宮崎繁三郎は負傷兵を見捨てることを禁止し、死者は必ず埋葬することを命じたので、部隊は撤退しながらも、負傷者を見つけると必ず見捨てずに共に撤退し、死者たちは埋葬していったという。
撤退戦で、他の部隊の多くは軍規が弛緩し、堕落する中、宮崎繁三郎の部隊は厳正な軍規が保たれ、常に団結していたというのもすごい。
若い頃より、陸士・陸大の勉強だけでなく、個人的に武田信玄や上杉謙信の戦記を好んでよく学んでいたそうである。
その影響か、いったん夜襲をかけて次の日はわざと夜襲せずに緊張して眠らずにいた敵の集中力が切れる昼に攻撃をかけた、とか、誰もいないところに軍旗を掲げて敵の弾薬を消耗させた、とか、飯盒の煙をわざと多く炊いて敵に大軍がいるように見せかけた、とか、あたかも戦国時代の智将のようなエピソードも面白かった。
敗戦後も、将兵が虚脱状態にならぬよう、熱心に戦後の日本の祖国再建を説き、捕虜生活においていろんな弁論大会や余興を開き、また出身地別の兵士の集まり(兵会)をつくって戦後も協力し合うようにした、という話や、英軍の捕虜虐待には断固抗議してやめさせた、という話も感銘深かった。
世の中には、どんなに困難な状況でも、その中で自分の立場で最善を尽くす人がいる。
そういう人がいると、ずいぶん暗い状況でも救われる気がするものである。
あの日本陸軍の無謀な戦争や無駄な作戦の中で、宮崎繁三郎とその部隊の人々は、そういう人々だったのだと思った。
戦争中の資料展を見て
先日、戦争中の資料展が近所であってて見た。
いろんな戦時中の資料が展示してあってなかなか面白かった。
中でも、戦時中の写真を集めたスクラップブックを自由に閲覧できて、とても面白かった。
その中の、古い戦時中の新聞を見ていたら、大泉黒石という人の『おらんださん』という小説の広告が、ちょうど日米開戦の頃の新聞の広告欄に出てて、「排英的長編小説」などと紹介されていた。
どうやらイギリスを批判した長編小説のようなのだけれど、どんな内容かこわいもの見たさで読んでみたくなった。
あと、戦時中の新聞は、やたらとポマードの広告が多かった。
ポマードって男性の整髪料だろうけれど、当時はそんなに需要があったんだろうか。
あと、結核の薬の宣伝も多かった。
時代を感じるものである。
また、当時の新聞の中に、でかでかと東条英機の写真を乗せて「稀代の名宰相」と書いてあるのがあってびびった。
その数年後には評価がまったく逆転するのだから、世評のあてにならぬことと、世の無常をしみじみ感じざるを得なかった。
他にも、戦時中の絵ハガキなどもあって、興味深かった。
アニメ映画も上映されていて、なんとなく見たことがあったような気がして、受付の人になんというタイトルの作品か尋ねたところ、「さよなら対馬丸」だとのこと。
たしか私が小学生か中学生の時に、たぶん学校の平和学習か何かで見た記憶がかすかにある。
沖縄の学童疎開の児童を乗せた船が、海上で攻撃を受けて沈み、ほとんどの児童が亡くなり、しかも箝口令が敷かれるという悲惨なストーリーだった。
他にも、福岡城の石垣の前に出征兵士を送る人垣ができている様子の写真など、いろいろ興味深かった。
いろいろな展示を見ると、世の無常をしみじみ感じるのとともに、二度とこうした悲惨な馬鹿げた時代が来ないことを願うばかりの気持ちになる。
あと、平成三年に県議会で決議されたという核廃絶を求める決議文が展示してあって、そんな決議があったんだとはじめて知って驚いた。
いろいろ知らないことが多いものである。
ドキュメント番組 「失われた大隊を救出せよ」 442連隊
今日、以前録画していた、「失われた大隊を救出せよ」というドキュメント番組を見た。
http://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/3115177/index.html
第二次世界大戦中に活躍した、アメリカの日系人部隊・442連隊についてのドキュメントである。
442連隊は、映画「ベストキッド」に出てくる空手の達人のミヤギが若い頃所属していた部隊として言及されていたこともあり、その名前は以前から知っていたものの、そこまで詳しくは知らなかった。
加えて、山崎豊子の「二つの祖国」にも出てきて、日系人強制収容を背景に、アメリカ人として認められるために多くの若者が志願したということぐらいを知っていたに過ぎない。
勇名をとどろかせ、アメリカ陸軍の中でも屈指の精鋭部隊として、ナチスドイツの軍隊と闘って活躍した、という漠然としたイメージぐらいである。
しかし、このドキュメント番組を見て、その戦場の悲惨さに絶句せざるを得なかった。
442連隊の勇名を特にとどろかせたのは、フランスのボージュの森での激戦で、包囲されていた他の米軍の部隊の救出を果たしたことによる。
442連隊は、敵軍に包囲された友軍のテキサス大隊を救出し、たしかに211名の人命を救いだした。
しかし、そのために442連隊は、350名以上の死傷者を出した。
その戦場でのあまりにも過酷な体験は、今もって90代を越した生存者にとって、言葉にならない苦悩を心に刻みつけている様子が番組ではとりあげられていた。
もともと、師団長のダールキスト少将が、自分の判断ミスで敵がいないと過信して進軍させたテキサス大隊が敵軍に包囲され、他の連隊で救出を試みたものの救出できず、442連隊に命令し、自分の失敗を糊塗するためにも死にもの狂いで救出させたということだったらしい。
そもそも、なぜ442連隊が結成されたかというと、ルーズベルトが日系人強制収容を行ったことへの批判をかわし、日系人自身が積極的に志願してアメリカに忠誠を尽くしている姿を見せることで、アメリカ批判のプロパガンダをつぶすという政治的狙いがあったことも番組では指摘されていた。
また、番組では、従軍牧師のヒロ・ヒグチが、ひとりひとりの兵士の顔写真と名前を記録に残していたことと、手紙の中で狂った指導者のためにいたずらに無駄な犠牲を出しているだけではないかという懐疑を書きこのしていたことが紹介されていた。
「果たして今回の戦争は意味があったのだろうか。
一歩進むごとに泥と雪と地獄を垣間見る。
我々の勝利は血にまみれていることを知ってほしい。
おびただしい命が失われた戦争は、戦後により良い世界を築かない限り、意味がなくなってしまう。
民族に関係なく、人間性のみが大切にされる世界を、私たちはつくっていかなければならないと思う。」
という、ヒロ・ヒグチの手紙のメッセージは、重いものだと思う。
442連隊の兵士のひとりひとりは、自分の家族たちが収容所から解放されるため、アメリカでの日系人の待遇や地位が改善するために、英雄的な奮戦をしたのだろうけれど、アメリカ政府にとっては、逆プロパガンダのため、また都合の良い手駒として使われただけだったのだろうか。
そう考えると、なんとも胸が痛むものである。
日系人の前途のことをろくに思いやりもせず無謀な戦争に突っ込んだ日本の当時の指導者たちも、そしてまた人種差別から日系人のみ強制収容し、そのうえでプロパガンダに利用するために442連隊をつくり、死地に追いやっていったアメリカの指導者たちにも、なんとも言えぬ気持を抱かざるを得ない。
すぐれた、良いドキュメント番組だったと思う。
「ヒストリエ」10巻
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面白かった。
続きが楽しみである。
萩尾望都 「山へ行く」
山へ行く (flowers comicsシリーズここではない・どこか 1)
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すばらしい一冊だった。
並みの小説よりはるかに読み応えのある珠玉の短編漫画集。
多くの人にオススメしたい。